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衝撃が走った。
ハンミョウは一瞬凍りついた。しかし、カナヘビのあたたかい涙から、単なる残忍な出来事ではないことが分かった。ハンミョウは黙って聞いていた。
「母さんは僕の為にふらふらになりながら餌を運んで来てくれたんだ。でも、ついに動けなくなってしまって・・・。最後に母さんはこう言ったんだ。」
カナヘビは涙をぬぐって一呼吸おいた。
「母さんが死んだら、絶対にそばを離れるなって。死んだ体には虫が来て卵を産みつける。その虫が大きくなって飛び立つ時が来たらそれがお前の餌になる。だから、その虫を食べて何とか生き延びてねって。・・・僕は母さんの言う通りにした。生きるために。でも、僕は本当は食べたくなかった。・・・」
そこまで言うとカナヘビはまた激しく泣いた。ハンミョウの目も潤んでいた。
その瞳にカナヘビが気づいて、湿っぽい話になったねと詫びた。
「君は悪くない。醜くもない。立派なお母さんを誇りに思って生きていけばいい。君の体は君だけのものじゃない。お母さんの分まで精一杯生きなきゃいけないね。何て素敵な体なんだろう。君は最高だよ。」
二匹は強く抱き合った。
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