〈始〉

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 ――――狂った音を聞いたことがない人なんているの?  初夏の風に頬をなぶられて、たった今出てきた神殿の広場に佇む。汚れのない、真っ白な神殿。 (闇と名づくもの)  神聖なる神殿から吹く風が孕むものは、体温のごとくなまぬるい異質感。  けがれた魂のような風が、吹く。  吹きはじめた。 (人より生じ……)  それゆえにこそ。  前に進まなければならない。そのときがくる。 (人へと、還る)  齢、12歳の最年少星術者―――ルカ=セント=スターゲイトは、広場を通り、街へと降りる階段前で振り返る。  そのときがくる。もうすぐ。  
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