契約は、計画的に。

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空手同好会、という非公認の部活を勝手に作って、教師から超問題児扱いされている早瀬ナツミ。 今日は雪が降って、たまたま武道場で筋トレすることになった僕たちバスケ部員は、その超問題児、早瀬ナツミ一人を前に武道場の入口から一歩も先に進めなくなっていた。 校則に完璧に違反してるショートカットのブロンド頭と、猫みたいな鋭い目付き。 猫みたい、と思ってしまったのは僕の目の前にいる早瀬ナツミが、その腕っ節のわりにすごく小柄で、華奢な体つきだったせいもある。 僕は、というと、バスケ部の補欠で身長もさほど高くなかったのだけれど、目の前にした早瀬ナツミのあまりの小ささに、正直驚いていた。 「…何見下ろしてんだ」  ハスキーなドスのきいている声と、雪よりも冷たい眼光で僕の背後にいた後輩たちが震え上がった気配がうなじあたりで感じられた。      いや、見下ろすつもりはまったくありませんが…。と内心思いつつ、僕はバスケ部の先輩からの伝言を早瀬ナツミにおずおずと告げることにした。  「今日僕たち、体育館使えないんで武道場で筋トレすることになったんだ」  簡潔に分かりやすく、僕は早瀬ナツミの猫々しい瞳をまっすぐ見ながら言った。   早瀬ナツミも、僕の目を見つめたまま、すぐに簡潔で分かりやすい返答をくれた。        「外でやれよ」  うわ~…ジャイアニズム全開じゃないですか。  だいたい、校内で話題にのぼる早瀬ナツミの事だから、僕のお願いを素直に聞いてくれるわけもなく。  かと言ってスゴスゴ引き下がれば、先輩がたにどやされるのは火を見るより明らかだった。  じゃあどうしようか。  「『アキヒロ・Mゲーム』で、どっちが武道場使うか決めない?」  とっさに口から飛び出していたのは、最近校内で広まり始めたとあるゲームの名前だった。  それを聞いた目の前の早瀬ナツミの長い睫がかすかに動く。  『アキヒロ・Mゲーム』  もともとは、他県の小学生たちが遊んでいたもので、いくつかのルールが追加されたり、それにまつわる都市伝説がうまれたりしていく過程で、僕たちの通う高校にも伝染してきた。  ゲームにまつわる都市伝説はいくつか存在するのだけど、そのうちのひとつが特別に僕たちの興味を引くものだった。
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