風の章【始】

4/27
6486人が本棚に入れています
本棚に追加
/480ページ
前方から聞こえてくる笑い声。 仲よさ気に歩いてくる親子。 母親はしっかりと娘の手を引いて歩いていた。 すれ違い様、少女は道を開けた。 親子は少女には目もくれず通り過ぎていく。 親子の笑い声を背に、少女は荒れた唇を噛み締めた。 寂しさ虚しさ惨めさ、そして孤独。 小さな心を埋め尽くすには十分だった。 深い闇の中、行く当てなく少女は歩き続けた。 何にも勝る、生きるモノの本能だった。
/480ページ

最初のコメントを投稿しよう!