558人が本棚に入れています
本棚に追加
壁に絡まった埃も、床に積もった埃も、この掃除機が吸い込んでいく。
掃除機を一面にかけ終わった、そして完璧とは言えないが、ある程度の綺麗さになった。
多分これくらいなら、友人はここに招待できると思う。
ホースの先で蜘蛛の巣を取ったため、先に埃をまとった灰色の糸が絡み付いている。
僕はそれを触らないようにして掃除機を立て掛けると、彼女のところに行った。
僕は部屋を出ると手すりに繋がれた彼女を、解放した。
手錠の片方だけ鍵を外して、彼女の手をゆっくり引っ張り部屋へ入れる。
彼女の手から離れた手錠は、一人寂しくゆれていた。
そして、今何もない部屋に僕と彼女と掃除機だけがいる。
僕はなるべく痛くならないように、彼女のガムテープを取ってあげた。
せき止める物が無くなった彼女は、何故私を連れて来たのか聞いてきた。
僕は答えれなかった。
上手く説明ができないからだ。
彼女の声がだんだん怒声に変わっていくのがわかる。
いつか彼女もわかってくれる。
心の中で言い聞かす自分の声は、あまりに弱々しくて彼女の怒声に負けていた。
最初のコメントを投稿しよう!