死体Aの場合

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最初はあの人の筆使いが嫌いだった。 荒々しくて乱暴で、とても嫌いだった。 でも、今はとても好きだ。 あの人は“ナイフ”と言う名の筆を使い、私から赤い絵の具を少しずつ取り出して塗っていく。 時々爪を使う時もあるけど、ほとんどが“ナイフ”だ。 絵の具を指の腹で広げたり。 縄で縛って固定したり。 ろうで固めたり。 私を作っているあの真剣な瞳に見つめられただけでいい。 あの眼光を体に浴びるだけでいい。 それだけで、私は気持ちがよくなる。
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