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お洒落な感じの店で、俺は彼女と向かい合って座っていた。
「……いつも、こんな店に来てるんですか」
「……そうね」
彼女がパスタを口に運ぶ。
「真奈美さんって、彼氏いるんですか」
「いないわよ」
そして、彼女は真っ直ぐ俺を見た。
「もう恋はしないって、決めたの」
もう恋はしない――
あの雨の日の彼女を思い出した。
寂しそうな表情(かお)をしていた彼女――
「変に勘ぐらないでよ。仕事に生きるって決めただけなんだから」
「じゃあ、あの雨の日は――」
今まで、絶対聞いてはいけない、そう思ってきた質問を、思わず彼女にぶつけてしまった。
「旦那が死んだの」
「え……」
「別に愛していたわけじゃない。でも、一人になったのが怖かった」
彼女は俺を睨んだ。
「同情されるの、嫌いだから」
「……そんなの、しませんよ」
旦那……
その事実よりも、彼女は俺のものにならない、そう確信してしまって、ショックだった。
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