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何を言っているのか理解力が追いついていないのか。
「シカトだけだろーが。物を隠されたわけでもない、仲間外れにされたとかでもない。邪魔だ辛気臭いっうっとおしい!」
少女は、叩かれた頬に手を添えて見ているだけ。
「まだ成長できたらそこまでの感覚があり、生まれたんだぞ!」
突き付けられている本には、母体と中にいる胎児。
「今の赤ん坊はお前より酷く、迫害されている。
都合よく処理され、命なのに命としての扱いを相手によって左右される。
産まれたのに、育てられても恩義も全て忘れ自ら命を絶つ」
付け加えるような説明を衣をはためかせて、少女に近寄りながら言った青年。
「貴方も理不尽で実に無駄な事をしようとしている」
何も感じでいくて、青年の目の前には確かに強張った少女の顔が目の前にあるのに。
写されていないように、冷たい。
「死ぬのは、一か月後で脳内出血。良かったですね、あと一か月後の炎」
少女が震えて、顔には恐怖しかなかった。
青年の手が少女の中に入り込んでいたから。
「本当なら、貴方は一週間前に死んでいた筈で。あるものによって伸ばされた命なんです」
入り込んでいるのを見ると、少女の五感にも違和感が噴出す。
「ああ──これ」
身体の機能よりも奥深くて、普段では感じられない部分。
他人では、感じられない──少女は逆らう事も出来ずに青年をただ見つめた。
「失礼」
ずるずると違和感が出て行くのも少女には、分かった。
「あの方達の、欠片。小さい小さ過ぎる……」
破れたガラスの破片のような、煌めきが青年の手にはあった。
「小さい?ンなもん良いだろう。サク、あと一か月しかないんだし、せいぜい頑張れ」
猫の姿に戻ると、青年の肩へ。
そして、消えた。
****
キラキラと、雪が降る季節でもない筈なのに。
最近はおかしい。
時々、雪に似たような煌めきが空から突然降り出して来る。
「また、だ……」
それも人には積もらというよりも溶けて行く、猫とか犬──動物は避けるように物陰に逃げ込む。
「何してんの?」
動物を見習って有り合わせの折り畳み傘をさした。
「雪が降ってる」
試しに素直に答えてみる。
友人は、ははっと笑う。
「快晴なのに降るわけないじゃん」
「……傘をさしたいお年頃なの」
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