595人が本棚に入れています
本棚に追加
「アンヌ様!?」
血が滴り落ちるように花びらが手の中から零れ落ちた。
「この王家の紋章の薔薇も、棘さえなければ最も弱い花なのかもしれないわね…」
シャルロットは何か言葉を探したが、結局小道に散った花びらに目を落とした。
「アンヌ、シャルロット!」
弾けるようなはつらつとした声が彼女らを呼んだ。
こんな風に呼ぶのは1人しか居なかった。
「お兄様…」
「シャルル様!」
思わずシャルロットは頭を下げた。
「そんなにかしこまらなくても…顔を上げて」
シャルロットは真っ赤になってしまい、言われたようには顔を上げる事が出来ない。
アンヌがその様子を見て笑っていた。
そっと盗み見るようにシャルルを見ればブロンドの髪が午後の日差しを受けて黄金色に輝いている。
アンヌとシャルルを見比べるとまるで髪の色は違う。
アンヌは一筋も乱れもなく艶やかで夜空のような黒髪を巻いていて、シャルルは首筋に沿って短く切り離された太陽のように輝く金髪。
どちらも美しくアンヌが王妃に、シャルルが王に似たのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!