薔薇のつぼみ

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 そしてこれが恐らく実らぬ恋だという事も分かっていた。  国同士で婚約し妻を娶る。  真面目なシャルルの事だ、妻に据えた女性を愛し大切にするに違いない。  揺れる眼差しで顔も見ぬ幻の女性を見つめ、シャルロットは焦げるような想いを胸の内に宿した。 「シャルロット?」  困ったような顔でシャルルは問いかけた。 「そんな顔をしなくても、ちゃんとアンヌの冗談だと分かっているから気に病まないでおくれ」 「まあお兄様、まるで女心を悟っているかのようなご意見ね」  アンヌは意地悪く笑ってシャルルの顔を覗き込んだ。  精悍な顔つきが困り果てたような表情を浮かべていたのでアンヌは肩を竦めて言った。 「…ではそういう事にしておきますわ。時にお兄様、どうしてこんな所を?正門はあちらですわよ」 「あ、ああ…兎狩りに出ていて帰って来たらちょうど2人が見えて」 「足をお運びになったと…」  含んだような笑みを浮かべてアンヌは言葉を続けた。 「その兎は仕留められましたの?」 「いや、代わりに鹿を仕留めてきたよ」  この分なら料理長が腕によりをかけてその鹿を夕餉に出してくれるだろう。  
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