595人が本棚に入れています
本棚に追加
「どなたと狩りに出かけたのかしら?クィニー侯爵様?パレードゥン伯爵様?てっきり私、雌の兎でも追いかけ回しているのかと思いましたわ」
アンヌは肩をそびやかしてシャルルに言った。
「今日は随分と突っかかるね、何かあったのかい?」
シャルルは険のある言葉の端々に戸惑いながらもアンヌの頬に手を当てた。
「何でも…ありませんわ」
その光景にシャルロットの胸はチリッと痛んだ。
何を妬いているのだろうか、仲睦まじい兄妹だというのに…妹のアンヌにまで嫉妬しているかのような胸の痛みにシャルロットはぎゅっと手を握りしめた。
邪で浅ましい嫉妬など抱いて自分が恥ずかしい。
「さ、日も落ちてきて冷えてきたし城に入ろう」
「そうしましょう、シャルロット?」
「あ、はい…」
アンヌとシャルルの後についてシャルロットも歩き出した。
蕾のうちに散った花びらがその後ろで舞い上がった。
温室でもないのに咲く季節外れの薔薇の花。
余りにも暖かな日であった為にその事にシャルロットは気付かなかった。
最初のコメントを投稿しよう!