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同日の夜半。
夕食が済み、部屋に戻ったシャルロットはようやく息をついて頭巾型の帽子を外して夜衣に着替えようとしていた。
いつもと変わらない1日が終わり、また明日に備えなければと思っていると、突然鐘がけたたましく鳴る音が聞こえてきた。
それが城の最上部にある鐘だとシャルロットは気が付かなかった。
城の鐘が鳴る事などシャルロットが生まれてからこのかた聞いた事が無かったのだ。
「なに…?」
戸惑いながらも不吉な予感に襲われてシャルロットは鎧戸を僅かに開けて外を覗いた。
そこからは城下町から何百、何千と火の川のうねりが城門に向かって伸びているのが見えた。
夜の街に輝く大松の赤い炎はゆらゆらと移動してきている。
ここを目指している事をようやく思い立つと真っ青になって廊下に出た。
「兵士は城門へ急げ!」
鈍い銀色の甲冑を付けた男達が廊下を駆け抜けてゆく。
「そこの女中!邪魔だどけ!!」
「どこからあんな数の軍が集まったんだ!?国内であれほどの数を気付かれずに集めるなど不可能だ」
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