595人が本棚に入れています
本棚に追加
「シャルロット…貴女は今すぐに王と王妃のもとへ」
コルベーヌは額を押さえながら呟いた。
「ですが私はアンヌ様お付きの侍女です。アンヌ様のお側に…」
「いえ!いいえ違うのよ」
顔に浮かんだ険しい表情と瞳は有無を言わせぬような力の籠もったものだった。
「良いから付いていらっしゃい」
齢60に手が届くというのにシャルロットの腕を掴む力は衰えが見えない。
強く強く掴んだ腕は枯れ木のように細いのに振りほどく事が出来ずにシャルロットはコルベーヌの後について急ぎ足で廊下を駆けた。
親しみ深く、慣れた廊下がやけに長く感じられる。
「コルベーヌ様、何故このような…」
「今話している状況ではありません、詳しくは…」
コルベーヌが言いかけた所で前方から荒々しい甲冑の擦れる金属の音と足音が駆けてくる。
「シャルロット、そこの部屋にお入りなさい!」
コルベーヌはとっさにシャルロットを突き飛ばすようにして近くの部屋に押し込んだ。
「何があろうと口を噤んでいなさい」
最初のコメントを投稿しよう!