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「貴女の母、オンディーヌ様には随分よくして頂きましたわね…」
思い出すようにアンヌは目を眇めて空を見上げた。
「そう言って頂けると母も喜びますでしょう」
アンヌの肩が小さく震えた。
「どうか…?」
「何でもないわ」
アンヌの手の内でスコーンが枝木を折るような激しい音をたてた。
「すいません…今日のスコーンは焼きすぎたようですね」
「いえ、ちょうどいいわ」
そう言ったアンヌの手は止まっていた。
ボロボロと皿の上にスコーンの欠片が散っている。
「アンヌ様?」
シャルロットはいつもと違う様子のアンヌを眉を寄せて見つめた。
「いえ、ちょっと考え事していただけよ」
アンヌは木苺のジャムをスコーンに自ら塗って口に運んだ。
「夜には荒れるわね…」
紅茶で流し込んだ後にポツリと呟いたアンヌの言葉にシャルロットは戸惑いを浮かべた。
見上げれば雲ひとつ無く、真っ青な空が広がっている。
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