プロローグ

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雨が降っていた。地面をえぐる雨粒は大きく、当たればひりひりと痛むほどだ。時折、雷が光っては、耳が痛くなるような叫びをあげる。強い風は、膝裏を押しては逃げていった。  夏休みはもう目前だというのに、ここしばらく雨ばかりが降り続き、今朝束の間の晴れ間を見せただけで、昼休みに入る前からこの調子だった。  そんな中、少年はぺしゃんこになったランドセルを頭の上に掲げ持って、水しぶきをあげながら走っていた。靴の中は水が染み込み、走るたびにカポカポと音を立てる。取っ組み合いで汚れたシャツも、べっとりと張り付いてくる。気持ち悪かったけれど、立ち止まるのも悔しくて、少年は必死になって走り続けていた。  せっかく持ってきていた傘は、突然の雨に困った誰かが持って行ってしまったのか、傘置き場から姿を消していた。
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