引きこもりの治療

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引きこもりの治療

少年は机に向かい、紙に何やら複雑な記号や数字を書き並べていた。ノックの音がしたが、その手は止まらなかった。暫くして、ドアが遠慮がちに開いた。 「邪魔させてもらうよ」 痩せた、そして妙にハンサムな男が部屋にすうっと入ってきた。少年の脇のベッドに腰をかける。 「初めまして……」 握手をしようと伸ばした男の手を少年はちらりと見ただけで、すぐにまた作業を再開した。 知らない大人が代わる代わるやって来るようになっていた。この男も、役所の青少年問題担当者か、登校拒否児童を専門にしたカウンセラーか。頭の隅でそう考えた時、 「カウンセラーの類ではない」 まるで心を読まれたようにそう言われて驚いた。 「君の両親や教師に依頼されたのではなく、勝手に押しかけてきたんだ。暫く話をさせてほしい」 君は突然学校に行くのをやめ、部屋にこもるようになった。その理由を誰にも言おうとしない。 当ててみよう。君は、この世界の成り立ちを数学の方程式に置き換える、そんな思考ゲームにはまってしまったのだ。つまりバーチャルな世界の中に、もう一つの世界を作ってしまう事はできないか、と。 図星のようだね。特に数学と物理において、君は天才だった。飛び級で既に大学生のカリキュラムを修了している。
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