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日の目が見え始めた、午前六時。
十二月に吹く冷たい風が、枝に僅かに残った葉を揺らす。
その風を肌に感じながら、彼は山の緩やかな坂道を走っていた。
道の先には百段近くある石の階段があり、そこを登ると行き止まりとして、小さな神社がある。
彼はリズミカルな呼吸をしながら、その階段を登って行く。
一段一段、テンポの良い足取り。
そのまま神社の鳥居を潜る。
ゆっくりと足を止め、後ろを振り向く。
日の目が、少しずつ町を照らして行く。
(もう五年か……)
ここに来るとふと思い出す。
「今日は早いな」
木の陰から出て来た一人の男。
この男との出会いを……。
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