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  肌を叩く音が響いた。   彼女に叩かれた、と気づくのに たいした時間は掛からなかった       祖父母が用事があって家を出ると  何やら苛立っていた叔母は私の腕を引き、身体を叩く。   “泣く”のは“ダメ”   そう思って唇を噛んで耐える。   それが勘に触ったのか、彼女は 更に私の身体を叩く。   もう叩かれるのは慣れたんだと、自分の頭の中だけで繰り返し呟く。   そうすれば、叩かれる事に動揺はしない…感情を出しすぎる事はないはずだから。   だけど それは失敗に終わった。       「望まれない子供のくせに…!」   それは 聞きたくない言葉だった   「あんたが生まれた時にあんたの親は離婚したんだ!        疫病神!   あんたが不幸を持って生まれてきたんだよ!」       “知ってた”よ   「あんたが生まれた所為で、上の子は片親しかいなくて淋しい想いをする事になったんだ!」    叩かれてるのに痛みが消えた   「あんたがいなかったら、そんな事にならなかったかもしれないのに!」       “わかってる”   「あんたがいるから…!   あんたさえいなかったら…!     あんたさえ…あんたさえ生まれて来なかったら…!」     それは 痛い言葉 だった   “知ってる”より“気づいてる”より“わかってる”より、   ずっとずっと痛みを伴うもの。     『ごめん、なさい…』   呟いたらまた叩かれた。   いつの間にか叩く手は“掌”じゃなくて“拳”だった。          
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