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「なぁ、」
「俺は、お前が」
すきだ、と情事の後のけだるさに身を任せ夢の世界に入ろうとした俺に、言ったのだ、奴は。
今までの俺たちは、偶に出くわした時にどちらからともなく、つっかかり。そして、年甲斐もなくいがみ合って、なんとなく別れる。いつもそれで終わっていた。それが、いつからだったか、暇な時にはどちらかともなく連絡をとって逢い、体を交わしてしまうようになり。
そしてそれを、俺は望むようになってしまったのだ、
「、やだ何言ってんの多串くん。」
「……」
「こんなおっさん捕まえてさ、」
そうだ、そうなのだ。信じられる訳がない。確かに、なんども体を繋げたがっていたから体の相性は良かったのだろう。
けど、それだけだ。
コイツはセックスの気持ちよさと、自分の感情を勘違いしている。今までみたいに体を繋げるだけでよかったではないか、少なくとも俺は、お前に抱かれるだけで満足なんだ。たとえそこに、愛がなくても。
「坂田、」
「だってそうだろ、お前には、」
あの地味な子が、って言おうとしたら口を塞がれた。
それは言うなってことなのか?
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