425人が本棚に入れています
本棚に追加
和やかな中宮御前とはうらはらに、内裏では弘徽殿に大納言公季殿の息女義子様、承香殿に顕光の大臣の息女元子様が女御として入内され、お互いに火花を散らしながら数ヶ月の時が流れていたのでした。
新しい女御の入内をあの日主上よりお聞きになっておられた定子様は、動揺する事なくその事を受け入れられた。
それでも時折お見せになる悲しげな横顔は、いつもより青白い憂いが占めておりました。
間もなく、新女御子様の五十日の祝をするに当たり、中宮様は約一年ぶりに内裏に登られる事となったのです。
まだ雪も深い二月、定子中宮は御所、職御曹司に入られその夜のうちに主上の御渡りがあったのでした。
最初のコメントを投稿しよう!