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主上はもう弘徽殿にも承香殿にも行かれない、新しい女御様を置いて昼間の内より職御曹司の中宮様の元へだけ通われる。
そして夜は自身の夜御殿にお呼びになられたのでした。
「やっと宮を取り戻せた気がする…」
そう呟いた懐仁様の胸は暖かくて頼もしく感じた。
何て気持ち良いのでしょう……裸の肌と肌が触れ合っている間だけ、わたくしはこの上もない安心感に包まれる。
「宮…誰よりも……あなたが愛おしい」
そう言われわたくしを潰さんばかりに抱きしめる懐仁様の腕。
このまま…このまま懐仁様の腕の中で死んでしまいたい。
「忘れ路の……」
忘れ路の行く末迄はかたければ 今日を限りの命ともがな
母貴子の歌が頭によぎった。
今ならこの歌がよくわかる。
将来までの愛を誓って下さった今、このまま懐仁様の腕の中で幸せなまま死んでしまいたい。
「死んでは会えなくなる…それは許せないな…」
懐仁様の手が更に力強くわたくしを抱きしめた。
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