前夜

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道長は弘微殿の細殿より主上と定子中宮のいる清涼殿をじっと見ていた。 帝が夜の寝殿に呼ばれるのは定子しかいない。 道長はそれが気に喰わない。 「道長殿、何を考えておいでじゃ?」 道長の姉であり一条帝の母でもある詮子が問いかけた。 「皇太后様、 今宵は中宮が夜の寝殿に詰めておられますな…」 「定子か…今更何を言っても無駄じゃ。関白の位は道長、あなたです。わらわは国母であるかぎり帝にはこの願いは聞いて頂く…定子には…中宮には負けるわけにはゆかぬ」
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