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次の日からまた詩織は姿を見せなくなった。
逢う時は授業かホームルームの時だけ。
教室で元気に笑う詩織を見ては、安心してあれで良かったんだと自分を納得させていた。
詩織が準備室に来なくなって半年が過ぎた頃、詩織と仲の良い田村で楽しそうに、廊下で話して居るのが目に入った。
『先生っ♪』
田村が俺に気付き、ニコニコしながら駆け寄って来る。
そのあとを詩織が仕方無い感じに追って来た。
『何だか2人共楽しそうだなぁ。』
普通に話せてるだろうか。
『先生、聞いて聞いて♪詩織ねぇ…』
『由希!言っちゃダメー!!』
詩織は必死になって田村の口を押させ、話せないようにしている。
そこまで必死だと余計に気になって仕方ない。
田村は苦しくなったのか、詩織の手を口から離しハァハァと息を切らしていた。
『いいじゃん♪先生も気になるよね?』
その田村の問い掛けに苦笑いして詩織を見た。
詩織は目が合うとサッと目を逸らし俯く。
『由希…もういいじゃん。行こうよ…。』
詩織の言葉に胸が痛んだ。
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