彼氏

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詩織の「行こう」と言う言葉を無視して、田村は話し始めた。 『先生…詩織ねぇ…彼氏が出来たんだよ♪』 頭の中が真っ白になった。 今……何て言った? 詩織に彼氏……? 『ねぇ先生聞いてる?』 『あっ…あぁ。ちゃんと聞いてたよ。中村に彼氏が出来たんだろ?おめでとう…。』 俺はちゃんと笑えているだろうか。 悲しみで顔は歪んでいないだろうか。 『本気で言ってるの?』 詩織が悲しそうな顔をして俺に聞いた。 『良かったじゃないか。なぁ田村。』 『そう…解った。由希行こう。』 『ちょっ!詩織!…先生またね♪』 そう言って詩織は田村の腕を掴み、引きずる様に行ってしまった。 そして気付くと、俺は家に帰っていた。 詩織に彼氏が出来たと、聞いた後の記憶が抜け落ちている。 どうやって授業をして、どうやって帰ってきたか全く覚えていなかった。 .
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