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男は棒読みで一気に話した。
みんなが唖然としていた。
春季がそっと手を挙げた。
男は、
「名簿見せて。
まだ見ていない。
学校名さえ知らないよ。」
と呟き、兵士から名簿を受け取った。
春季の顔写真を見つけて、
一瞬表情が変わった気がした。
「瀬川さん…なんですか」
また、棒読みだった。
春季はゆっくりと口を開く。
心臓の音が高鳴っているのがわかる…
「あの…個人的なことです…
私の・・・・兄・・・
お兄ちゃんですよね…?」
この言葉を聞いて、
理央たちは驚いて春季を見たし、
晶は同じことを
考えていたらしく男を見つめた。
そして、瀬川と名乗る男自身は焦りもせず、
ゆっくりと口を開いた。
「私には家族がいません。」
その一言だけだ。
春季はもう一度同じことを聞いた。
絶対にこの声、顔は兄なのだ。
「座れ」
春季は座らなかった。
危険を察したのか、
晶がゆっくりと春季を座らせた。
「瀬川、とにかく座れ」
「神田……くんだね。ありがとう」
晶は男を見もしないで、
春季のそばに座った。
座ったのを確認し、
男はまた同じことを聞く。
「もうないね?」
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