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今度は凛が震えながら手を挙げ立ち上がった。
「あの…父や母は
私たちがこんなこと…?になってるなんて
知らないだろうし…
連絡させてもらえませんか?」
凛はおずおずと瀬川を見る。
「心配ありません。
私たち政府の者が各家庭に行って、
連絡はしました。」
「え…」
「つまり、許可をいただきにいくんですね。
まぁ、ちゃんと君らの参加には
保護者の許可は頷きました。
一部を除いてね。」
凛は泣きそうな顔をしながら
口をまた開く。
「わ・・・私の両親は・・・
許可したんです・・・か?」
「山田凛さんの家を担当したやつ?」
「私です」
奥から兵士が出てきた。
「どうだったかな?」
「私どもが何度言っても、おどしても、
許可が出なかったので」
兵士はニヤっと笑った。
「殺しちゃいました」
そういうと、兵士は元の場所へ戻る。
「そういうことです。
・・・・山田さん、座って」
凛は震えて立ったままだった。
男の声は全く聞こえていないみたいだった。
「殺した・・・
お父さんも・・・お母さんも・・・
死んだ・・・・・」
ただ、その言葉を何度も繰り返していた。
男はもう一度「座れ」と
言ったが、凛は座らない。
「凛、座って」
美咲が言った。
「凛、お願い。今は座って」
理央が言った。
「凛、ご両親が亡くなって
辛いのはわかるよ。
でも、今は座って?」
玲央奈がそういったとき、
凛はゆっくりとこっちを見た。
「みんな・・・勝手・・・
私の気持ちなんて、わからない!!
どうすればいいのよ・・・
お父さんも、お母さんも
いなくなったんだよ?
会いたい・・・・・
もう一度会いたいよ・・・・・」
泣いている凛とは違った表情を見せた人間がいる。
凛の両親を「殺した」と
笑っていった兵士だ。
ニヤニヤしながら男に何か言う。
春季が兄と思ったあの男はうなづいた。
すると、兵士は嬉しそうな顔をした。
「もう一度だけ言う。座れ」
凛はやっぱり座らない。
嫌な予感がまたした。
「凛!お願い、早く!座って!」
春季は叫んだ。
しかし・・・遅かった。
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