美しい悪意の造り方

ーしかし、誰もが待望の作品は未完だった…ー

ある日、男がＫに「相談したい事がある。」そう言っただけの電話が来た。男が電話で会うという時、日時、場所、座る場所さえ決まってる。口数が少ないＫの友人は、ひどく気まぐれで、無作法なところがあった。決して不満がある訳ではない。これも芸術家の特権であるからだ。

いつものBAR、いつもの時間、いつもの席に彼はいた。しかし、彼は違う雰囲気。

「で？相談って何だい？○○○」

Ｋは男に問う。

「妻が…他の男と逢っているかもしれない」男の口から予想も立たない相談を投げつけられた。彼女は確かに美しい、が故に声を掛けられず、悶々とした心を未だに棄てられない男は山程いる。だからこそ、彼女は君を真剣に愛している。君から彼女を奪うなんて、世の男達は畏れ多くてできなしない。それは、君の思い過ごしあるいは疲れているんだよ。

芸術家の繊細な心を癒やしつつ、彼を家に帰した。