美しい悪意の造り方

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ある春の日曜日。 Kは友人の家に食事に誘われた。 友人は天才芸術家と言われた夫と完璧の美女と言われた妻だった。 彼の収入からは、大きく予想を外すほど小さい家だった 庭には、色合い豊かな花が咲き乱れ、日差しを暖かく優しく感じる事ができる天窓。 ラジオから流れ、体に抜けていくクラシック。 K達は、本当に楽しそうに話をした。 「また鉢が増えたんだ」と花を世話する夫。 「彼が好きなシチューパイが焼けたわ。Kも食べて」と微笑む妻。 なんとも、優しくも暖かい光景であろう。平和とはこれだ。この光景こそが、それに相応しい。 K以外の人間はそう思うであろう。
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