4人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
11歳の誕生日。
その日を境にあたしの瞳に映る全てのものが消えた。
視ることのできない闇の世界は、表の世界の "声" しか聞こえてこない。
あたしはこの暗い世界に1人、取り残されていた。
7年前の春の事だった。
高速道路のカーブを猛スピードで走ってきた大型の車が、対向車だったあたし達一家が乗っていた車に正面から激突し、炎上したのだ。
その当時の記憶はうっすらとしか覚えてなかったが、後から聞いた話によると、相手の運転手と両親はほぼ即死。
そして、生存が確認されたあたしは…
両目から大量の血を流して倒れていたらしい。
車体が炎上したときに車のガラスが目に刺さった事が原因だと聞いた。
あたしはすぐに病院運ばれ、14時間にも及ぶ大手術を行った。
処置は無事に成功したが、目は角膜移植をしない限り一生見える事はないと宣告された。
頭の中が真っ白になった。
父と母を失い、
両目の視力を奪われ、
事故の後遺症で、左足も自由には動かしにくくなってしまった。
警察の人も毎日来て、あたしに何かと事故の事について色々質問してきた。
聞きたくなかったし、答えたくもなかった。
11歳の頃のあたしには精神的に重すぎたのだ。
角膜移植の話も医師から勧められた。
ただし、多額の医療費がかかるうえにドナーもいつ来るかはわからないらしい。
医師はあたしに移植手術を受けたくなったら教えて欲しいと言われたが、あまり気が進まなかった。
季節は巡り、7年が経った。
あたし、"須藤 明"は桜台病院にリハビリの為、現在も入院している。
左足の後遺症は7年の間にだいぶ快方へと向かい、ゆっくりではあるが歩けるようになった。
しかし、見えなくなった両目は未だに包帯を巻かれたままであった…。
そして、まもなく18歳の誕生日を迎えようとしていた。
あたしが"彼"と出会ったのは、ちょうどその頃だった。
最初のコメントを投稿しよう!