―柚希 貴裕―

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目覚ましが鳴る前に起きてスイッチを切る。 時刻は5時52分。 空が白んで朝日が差し込む。 …。顔を洗うか。 部屋を出て、階段を下りる。 洗面所を出て、朝食をとる。 『貴ちゃん、おいしぃ?💕』と、僕の顔をのぞき込んでくる女性。 この下手したらまだ女子大生でも通じるんじゃないか、とつくづく思う女性は、正真正銘、僕の母親である。 ‐柚希 翠那(すいな)、今年の8月で確かに34歳になる💧 『おいしぃ?💕』 …。毎朝、いや、手料理を食べる度に聞かれているから、流石に慣れたが、面倒なのはこれからだ。 まったく、家事なんか使用人にさせればいいのに。 ただでさえ― 『ねぇおいしぃ?💕』 『…美味しいよ』 『ほんとー?』 『本当だよ』 『ほんとにほんとー?』 …。…。 何回もこのやり取りをしないと終わらない。 僕の朝はこうやって始まる。
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