第一章 転校生

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気候も暖かくなり始めた初春の四月。 まだ肌寒さの残る風をその身に受けながら、一人の少女が登校していた。 風が吹く度に、背中まで伸ばし、下ろしている黒髪が弄ばれる。 「寒い……」 足を前に進めながらも、四月になったのに肌寒い風に文句を言うように、少女は呟いた。 少女の名前は武内 由梨(たけうち ゆり)。 今日から高校二年になる。 その辺のどこにでもいる地味な普通の女子高生、と本人は思っていたが、周りからの評価は「美人」である。 飾らない雰囲気や外見が、周りに好印象を与えている事を、由梨自身は全くわかっていなかった。
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