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寒さに身を震わせながら、いつもより少し急ぎ気味に歩く。
その時、突風が吹き抜けた。
「っ……!!」
由梨は小さな悲鳴を上げて、その場に立ち止まると、髪とスカートを押さえた。
吹き抜ける突風に混じって、微かに聞こえた声……。
「見つけた……。……やっと」
「……え?」
思わずまだ止まぬ突風の中、顔を上げて声の主を探す。
しかし近くには、誰もいない。
声の主を探している間に、風は止んでいた。
再び辺りを見回しても、誰の姿も認めることが出来ない。
微かにしか聞こえなかった声だが、空耳と思うには、あまりにもはっきりと言葉を聞き取れた。
首を捻りながらも、由梨は学校に向けて、再び歩を進める事にする。
その声が、全ての前兆とは知らずに……。
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