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背筋をピンと伸ばし、髭を揺らしながら一匹のライオンが森の中を歩いていた。
金色のたてがみを風になびかせ、威風堂々と歩く姿はまさに森の王者と呼ぶにふさわしい姿だった。
ただこのライオンは…
小さな頃から暴れん坊で、親から捨てられた過去を持っていた。
それ故に「愛情」を知らず
同時に「他人を思いやる心」も知らなかった。
だけれど…
ライオンにとってそんな感情は必要無かった。
自分以外の生き物は全て…
「餌さ」にしか過ぎなかった。
空腹を満たすためだけでなく、暇を潰すためだけに命を奪う事もあった。
そんなライオンを他の動物達は恐れ、彼の鳴き声が聞こえると…
それがどんなに遠くから聞こえても直ぐに、その場から姿を隠した。
ライオンにとってそれは心地良かった
皆が自分を恐れ
自分がこの世界で一番の存在だと
そう彼に自覚させた。
それと同時に胸の中に沸き上がる感情…
それが「寂しい」と彼が気がつくには未だ、時間がかかりそうだった。
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