ガラスの心

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そして、いままでに聞いたことのないような低い音を聞いて体が揺れた。 落ちたらいけないと思って必死にサクにしがみついていた。 揺れたのは、体ではなくて、地面であることに気がついた。 アパートのすぐそばには新幹線が走っている。 だから、新幹線が通るたびにアパートはがだがた揺れる。 でも、今回の揺れはそれとはちがっていた。 地面が波をうっているような揺れだった。 タクヤは手と足で力の限り体をささえていた。 ふと下を見ると、畑の中に大きな目が一つあった。 居間よりも大きな目だった。 落ちたらきっとその目に飲み込まれると思った。 手に力が入る。 そのとき、空がオレンジ色に光った。
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