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『恋人か……僕達の関係はそれより複雑かもしれません。
なんたって殺人事件の主人公達ですからね』
『複雑か……確かに』
刑事さんはヘッドライトに照らされた先を見据え、片手でハンドルを握りつぶやいた。
『すいません刑事さん。お願いがあるんですが』
『お願い?』
『はい。それと今後の為に携帯番号を聞いてもいいですか?』
『番号?』
『必要になるかもしれないから』
刑事さんは車の流れを確認して路肩へ車を停車させた。
ハザードランプの一定なリズム中、サイドブレーキが掛かる独特の音が車内に響く。
刑事さんはシートベルトを外して振り返り、手の中の携帯電話を僕に向けた。
『赤外線いい?』
自分から言い出したのに、意外と若い刑事さんに一瞬尻込みする。
僕は赤外線受信をするべく身構えた。
受信した情報には血液型や誕生日、星座など不必要な情報が入っている。
合コン好きかキャバクラ好き。歳から言って合コンはないか……。
『後でメール送って』
ほんのり笑顔の刑事さんはそう言って前を向き、車を発車する為シートベルトに手を延ばした。
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