あったかい…

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
雲が泳いでる。 楽しそう とかじゃなくて ただ。 そう、「ただ」って言葉が似合う。 私にも。 ただ、ここに居る。 絵本に出てくるような丘の上 あ、絵本に出てくるような蝶々だ。 ヒラヒラ私の近くを舞う 「コンニチハ」 蝶々にセリフをつけてみる。 「アタシキャサリン宜シクネ」 「私、名前ないけど宜しくね」 ちょっとだけ楽しくなる。一人ぼっちじゃないって気持ちになる。 ヒラヒラと蝶々が離れて行く。 「アタシハ好キナ人ノ所ニ行クノ。ソノ人ハ空ニ居ルノ。サヨウナラ~」 「私を置いて好きな人の所に行っちゃうの?」 「ダッテ、アタシ貴方ノ事何モ知ラナイ」 「名前…名前があったら残ってくれた?」 「考エテアゲテモ良カッタワ サヨウナラ」 ヒラヒラと溶けていく。 一瞬私の目が霞んだのかと思えた。 名前の大切さを知った。 あと、私の想像力に悲しくなった。もっと素敵なセリフを考えれば良かった。 例えば… あ、丁度よく絵本に出てくるような蝶々だ。 まず私から明るく挨拶。 「こんにちわ!」 ヒラヒラ あ、普通は蝶々って話さないよね。 「コンニチハ」 あ、喋った。 「こんにちわ、何してるの?」 「ナニモシテナイ。貴方ハ?」 「私も何もしてないの」「ソ、ジャアネ バイバイ」 「どこに行くの!?」 「好キナ人ノ所ニ行ク サヨウナラ」 「私を置いて好きな人の所に行っちゃうの?」 「ダッテ他ニスル事ナイ」 「私が何かしてたら残ってくれた?」 「ウン」 ヒラヒラと溶けていく きゅう っと悲しくなる。 鼻がツンと痛い。 名前が必要 する事も必要 でも、私にはない ギリギリギリと肩に爪をたてる。 ただ、悲しくて苦しかった。ただ。 あぁ、知ってる。この悲しみと苦しみも。 名前が欲しい気持ちも する事が欲しい気持ちも でも、目を開くと真っ赤だったの。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!