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ウィーーン…
自動ドアの独特な電子音が聞こえてお客さんが来たのに気付く。
見ると中学生か…この春高校に上がるか位の一人の男の子。
『いらっしゃいませ♪今日はどうされますか?』
鏡の前に座らせて仕事を始める。
そうすると彼は意を決した感じで私に一冊の音楽雑誌を突き出してきた。
『あ…あのっここ…こんな感じに切って下さい…!』
突き出してきた雑誌を受け取る。
表紙は今ブレイクしているバンド『bulletcrow』だ…
このバンドの特集をしているあたりきっとこの中の誰かの髪型を真似したいのだろう。
目の前の彼はすごい緊張しているのかカチコチになっていた。
『bulletcrow?私も好きですよ~、で、誰の髪型モデルにしたいの?』
雑誌を彼の前で開いて尋ねるとカチカチに肩を固めたまま一人、指差した。
『jyulowさん?ドラムの人だよね、私も好き♪かっこいいよね~』
そういうと彼はバッと振りかえり
『はい!めちゃくちゃかっこいくてすごい憧れなんです‼』
ファン魂に火をつけてしまったか…
でもその分変な緊張は解けたようで肩の力が抜けていた。
頭を掴んで再び鏡を向かせる。
『jyulowさんの何処が好きなの?』
『全部好きっスけどやっぱ一番は音ですね、なんつーかパワーだけじゃない彼独特の優しい音がすごい好きで‼』
髪を梳きながら話を聞く。
最初のカチカチは何処へやら…目をキラッキラさせて話す目の前の少年。
いつの時代も好きなものを語る人の目は綺麗だ。
光を反射させて輝くビー玉のように。
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