赤の従者

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ツバキが戻ってくると、私はすぐに髪どめを包みから取り出した。 「ツバキ。しゃがんで」 ツバキは何も言わず私の前にしゃがむ。 私は彼の頭にひとつの髪どめをつけた。 ツバキは驚いたように目を見開いた。 「僕に・・・?」 私は頷いた。 私はもうひとつを取り出し 「つけて」 とツバキに言った。 するとツバキは困った顔をした。 「リリ様。ご自分でおつけになられては?」 「いや」 速答で返ってきた言葉にツバキは複雑な顔をした。 口元は笑っているが、眉が下がり瞳は悲しそうだった。 ツバキは一度深呼吸し、差し出された髪どめを受け取った。 そして私の頭につける。 その手は震えていた。 「・・・これで、よろしいですか?」 声までも震えていた。 私は大きく頷き言った。 「ありがとう。ツバキ」 ツバキは目を細めて微笑んだ。
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