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高杉は集落の中の一番大きい家を訪ねた。
門番らしき者に声をかける。
「棟梁の高田五郎殿にお会いしたい」
「分かりました。…こちらへ」
その者は案外あっさりと通してくれた。
高杉は少し拍子抜けした。
しかし、そこは仮にも忍の棟梁の家。
実際は門番も要らないだろう。
「棟梁、お客様です」
「どうぞ」
襖の奥の声に、高杉は部屋に通された。
中には優しそうな男性が居た。
穏やかな笑みがよく似合う。
「初めまして。棟梁の高田五郎と申します」
「高杉晋作と申します」
二人は丁寧に挨拶を交わした。
「して…何の御用で?」
五郎はすぐに本題に入った。
「はい。それは…」
そう、高杉は高田の忍に仕事の依頼をしに来たのだ。
五郎は話を聞き終わると立ち上がった。
「では、御依頼の担当の忍を呼んで参りますので、そこでお待ちください」
五郎はにっこり笑うと立ち去った。
高杉は暇を持て余すので、なんとなく部屋を見回した。
見回しながら、思考を巡らせる。
あの高田五郎とかいう男、忍の棟梁なのに物腰が柔らかい。
到底、人を殺せるようには見えない。
しかし、そういう人間程恐ろしいものだ。
高杉はそんなことを考えていた。
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