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その頃、五郎は担当させる忍を探していた。
是非、あの忍にやらせたい。
そして、ようやく見つけた。
その忍は修行をしていた。
長い黒髪を靡かせた、幼い少女だ。
木にぶら下がっている的に、狙いを定める。
目を僅かに細め、微調整をする。
続けざまに数本クナイを放つ。
見事、ど真ん中に突き刺さった。
「心」
五郎が呼び掛けると、すぐに少女―…心は振り向いた。
顔立ちは年相応には見えず、幼い。
背が同年代の子よりも低い心は、五郎を見るや駆けてきた。
「父上!」
嬉しそうに自分に抱き付こうとした心を、五郎は制した。
彼女はきょとんとし、首を傾げた。
「仕事だ」
その一言に心は気付いた。
今は父と娘ではない。
棟梁と部下なのだ、と。
「…はい。棟梁」
心が答えると、五郎は頷き、踵を返した。
心も後を追った。
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