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この日は春も近いってぇのにまだまだ寒くて。
男達の天国。吉原遊廓への道を人混みに紛れて歩く影が二つ。
「お前…本当にいいのかい?」
「ふふっ…もちろんだよ。アタシが行きたいって言ったんだもの!」
心配そうに覗き込む母親に優しい笑みを向けている少女。
名はお美津。
「…そうか。本当にお前には苦労をかける…。」
母親は涙混じりに言った。
「そんな事はない!母上のお役にたてるのなら。」
お美津の家では食べるのがやっと。
その上年貢の取り立ても厳しく女手一つで育ててくれた母親に楽をさせたいとお美津は遊廓で働く事を決めた。
最初は反対だった母もどうにか説得してやっとここまで歩いて来たのだった。
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