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~お美津視点~そのあと、廊下で女郎たちとすれ違いながら奥のほうの綺麗な部屋に案内された。
「…綺麗…」
そこには見たことのないような綺麗な女が髪を結ってもらいながら煙管をふかしていた。
「ちょいと花魁、新しく入った妓(コ)だ。世話してやっておくれよ。」
遣り手の女が声をかけた。
どうやらこれからお世話になるらしい。
アタシは急いでその場に三本指をつけて頭を下げた。
顔は見えねぇがアタシを見ているようだった。
「おい。面上げな。」
予想外の少し低めの声に驚き顔をあげると視線がぶつかった。
するとその人は無愛想に言う。
「わっちはここの花魁、狭霧(サギリ)だ。てめぇ田舎もんだな…フッまあいい。せいぜいわっちの迷惑になんねぇようにしな!」
正直その性格にカチンときた。
だがこれから世話になる姐さんだ…下手に手も出せねぇ。
だからただ黙って「よろしくお願いします。」とだけ言ってやった。
この時はまだ、この女(ヒト)との出会いが後のお美津にとって忘れられないものになるとは想像もしていなかった。
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