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マーヤは、いつもの様にベッドで横になりながら、窓ごしの風景を見つめていた。
「ハァ…」とまた、いつものため息を吐いた。
3月になる街並みは、別に何ら変わりもなく、ただ春が近いにも関わらず、まだ冬の残りの様な冷たい風だけが、変わり映えのない街に吹き抜けていた。
生まれつき目が見えないマーヤにとって、そんな変わり映えのない街並みであっても、マーヤから見た風景は、どこを見ても真っ暗な景色であった。
「お母さん。」
マーヤは、窓を見つめながら、この病室内のどこかにいると思われる、お母さんを呼んだ。
「マーヤ、なぁに?」
マーヤのいるベッドのすぐ横から、お母さんの声が聞こえた。
マーヤはその、声が聞こえた方向へ、顔を向けた。
「もうすぐだね…誕生日。」
マーヤは、声がした方向に向かって言うと、またその方向から、お母さんの声が返ってきた。
「マーヤは幾つになるのかな?」
お母さんは、マーヤに優しく問いかけた。
「7歳!」
マーヤは、お母さんがいる方向に向かって、自信満々に答えた。
お母さんは、その元気なマーヤを見て、温かい手でマーヤの頭を優しく包む様に、ポンと置いた。
マーヤは、とろけるような顔で、ニコッと笑った。
マーヤは、生まれつき視覚がなく、体も弱い為、小さい頃から病院の入退院を繰り返していた。
小学校を入学したマーヤは、2日学校へ行った後、また入院をする事になった。そしてマーヤは、もうすぐ7歳の誕生日を迎えようとしていた。
マーヤは、また窓の方へ顔を向け、窓から見える風景を見ていた。
マーヤには、見る事などできないが、マーヤの頭の中で、マーヤが描いた風景が見えているのだ。
そんなマーヤを、後ろから見守っているお母さんが、少し心配そうに言った。
「マーヤ…最近、何か嬉しい事でもあったの?そうやって、ずっとお外を眺めてて、学校に行きたいって言わなくなったし…」マーヤは、窓から見える景色を眺めながら言った。
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