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「マーヤ…」
お母さんは、マーヤのその真剣な眼差しに、何も言うことができなかった。
しにがみと友達だなんて…。お母さんは、決してマーヤがおかしくなったとは思えなかった。だからと言って、しにがみの存在を信じられる訳でもなかった。
マーヤは、声を出さず涙をポロポロと流し、泣きじゃくっていた。
そんなマーヤを見て、お母さんはたまらずマーヤを抱きしめた。抱きしめられた瞬間、マーヤは大きな声で泣いた。お母さんも、抱きしめながら、目から涙をこぼした。
赤々とした夕日が、沈みはじめた。何の変わり映えのない街並みだが、夕日が沈んでいく風景だけは、さっきまでの街並みとはまるで違う、まるで別世界に来たかの様な…そんな気持ちになる程、美しい風景だった。
すっかり泣き疲れて、マーヤはベッドでぐっすりと眠っていた。
お母さんは、音を立てない様に、帰り仕度をしている。
帰り仕度を終えると、病室の椅子に置いてあったバッグをとり、気持ち良さそうに寝ているマーヤを見て、小声で言った。
「また明日来るね。おやすみなさい。」
病室の出入り口のドアノブに手をかけた時…
「約束だよ…スィッチ…」
後ろからマーヤの声がした。
お母さんはびっくりして、後ろを振り返った。
ベッドの上で、マーヤはぐっすりと、寝たままだった。
お母さんは、寝言を言ったんだと理解して、クスッと笑った。
「おやすみ…」
寝ているマーヤに、また小声で言うと、お母さんは、音を立てない様に、病室から出て行った。
ぐっすり眠っているマーヤの寝顔は、とても幸せそうな笑顔だった。
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