夏の出来事

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「ついたぜ」 「ここ?誰もいないじゃん?」 「まぁそのうちくるさ」 おれが真人の自転車を見ていると真人が問い掛けてきた。 「昔はよく2ケツしたもんだよな?」 2ケツとは2人乗りである。 「そうだよな、俺は何でかいつも運転させられるんだよな」 「そーそー、お前それで“冬彦タクシー”とかなんとか言ってたな」 真人はバカにしたように笑った。 「おかげで俺は後ろに乗ると怖くてな、後ろは苦手だ」 「俺は楽がしたいから後ろだ」 「なに?そうだったのか!」 冬彦も真人も2人して昔話に花を咲かせた。 ジャリ… 公園の砂を誰かが踏む、音がした。 2人がふりかえると 女の子が一人立っていた。 「おーい!真奈美!こっちこっち!」 真人が手招きすると真奈美(まなみ)という子はこっちにやってきた。 俺は真人の彼女?こんなかわいい子なんて羨ましいな。と思ったが口には出さなかった。 「紹介するよ、コイツは友達の真奈美、んでコイツは親友の冬彦!」 先手を打ったのは真奈美だった。 「こんにちわ…初めまして…」 人見知りするのか…ちょっと声色を変えて挨拶された。 「こちらこそ、どうも」 俺は実は女の子は好きだが、話すと言うのは大の苦手だった。恵美のように昔から知ってるならまだしも、この 年で初対面はぎこちなくなってしまう。 3人は沈黙につつまれた。 だが、次の瞬間、その空気がおかしかったのか、真奈美が吹き出した。 それにつられてあとの二人も笑った。 蝉の音がシワシワ鳴っていて、夏の匂いと心地よい涼しい風が吹いていた。 そんな夏の出来事… ……… ………… カラン… ボールペンが転がる音。 「少し休憩しよう…なるほど、それで冬彦君はこの〇〇県に来たわけか」 「はぃ…」 「あ!…ちょっと!」 刑事さんは近くにいた若い警官に話しかけ、小銭を渡してもどってきた。 「喉が乾いただろう?コーラ…のむだろ?」 「はい…ありがとうございます」 「それにしても君は真人の友達か…」 一瞬、時がとまった。 「え?知ってるんですか?刑事さん」 俺は思わず聞いてしまった。 「知ってるも何もアイツは…」 「丸山巡査長!コーラです!」 話しをさえぎるように警官が入ってきた。 「お、ありがとう。ほら、飲みなさい」 「あ…はい…ありがとうございます」 巡査長?刑事じゃないのか?この人… 「さて、どこまで話したかな?そろそろ始めようか」
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