第三章・―捜査開始―

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 そんな微妙な空気にも構わずに、井原と明の会話は続く。 「もしかしたら犯人は、サイコパスなのかも」  井原が言うと、意外な着地点にきたとばかりに高村が声をあげる。 「まさか、そんな難しい事件ではないだろう」  高村は今回の一件について、ストーカーのような熱狂的ファンというか、単純な思考を持つ犯人によるものだと認識しているらしいが、それを否定したのは井原ではなく明の方だった。 「そんなに単純な事件ではない気がしますね。現場に残っていた遺留品や検死の結果から見ても、そこにいるストーカー以外にも最悪もう一人、事件の核心に絡んでいる可能性が高い。それのどちらかが犯人だとするならもう少し突っ込んだ捜査をしなければ、真相は掴めなくなると思いますよ」  言い切るには何らかの根拠があるらしく、明は難しい顔を崩さないながらも、視線は高村の方を向いている。
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