第三章・―捜査開始―

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 だが令は違っていたようで、にっこりと笑うとやんわりと井原の意見に釘を刺した。 「あのね、井原君。何故だか知らないけれども、主婦さん達はやたら近所の噂話に詳しいものなんだ。例えその人がマンションの住人でなくとも、もしかしたら重要な証言が聞けるかも知れないよ。だってさ、被害者の女性にはストーカーが絡んでいたんだから。これって格好の噂話の的じゃないかな?」 「ああー……。まぁ、言われてみればそうですね」  昔からのイメージで、何故か主婦という生き物は、一体どこから仕入れてくるのかは知れないが、本人ですら忘れてしまったような些末な事実まであちこちにバラ撒いていく習性がある。  どちらがどれだけ知っているか、競争のような会話まで繰り出されるためなかなかとうして侮れないのだ。  その話を聞いて納得した井原が感心したように頷くと、令は優しげな表情を崩す事なく更に続けた。
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