第三章・―捜査開始―

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 そのお陰で課長からも信頼されている令は、時に明が手がけるものと引けを取らないくらいの難事件を任されたりもする。  一度にいくつもの事件を担当する訳ではないが、任されたものは最後まで丁寧に扱い調書なども、文句の一つも挙がらないくらい完璧に仕上げてくる。  そんな風に令は、普通なら途中で音をあげてしまいそうな難題ですらも難なくこなしてしまう、実は結構凄いやつなのである。  なのに明の前では、決して自身が持っている才能の片鱗を微塵も見せようとはしない。  いつもにこにこと笑い、時たま天然なのかわざとなのか分からないボケをかまし、明から突っ込みを入れられつつ場を和ませていく。  たまに本当に馬鹿にしてくる者もいるが、当の本人は意に介してすらいない。  それを明の方も理解していない訳でもないのに、これまたわざとなのか天然なのか、そうと分からないスルーの仕方で令に接しているのだ。
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