第三章・―捜査開始―

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 要するに暗黙の了解で、二人も頭の冴える人間がいれば船頭多くして山へと漕ぐの如く、捜査が行き詰るとお互い了解しているのだろう。  だからこそ明といると、令の方が率先して遠慮する。  何も余計な事を言わず、意見に従う。  そして今日のように、別行動をするようになってから初めて本領を発揮し始めるのだ。  だから明も、署内では常にというくらい一緒にいるくせに、いざ捜査が始まると別々に組む事の方が多い。  しかも、同僚や他の捜査員には細かく指示を与える際にでも、令にだけは適当っぽい言葉でしか伝えない事も多々あるのだ。  それで指示以上の仕事をこなしてくるのだから、相当腕利きの刑事といえよう。 「それに、あれって朝の第一波でしょ。この機会を逃したら、当分井戸端会議は開かれないと思うんだよね」  令はそう言いながらも、豹変振りに感心しまくっている井原を置き去りにしつつ、公園の中へと足を踏み入れる。
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