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背後から明かりが僅かに届くだけの薄暗い部屋の中で、煙草の小さな明かりだけが点っている。
むせ返る程の血の匂いが充満する部屋の中心で一人の男、藤牧明が立っていた。
気だるそうに部屋の様子を眺める明の背後では、制服を着こなした大勢の人間が忙しそうに働いている。
やがて、少し前方に血だまりを見付けた明はそちらの方へと歩き出す。
背後で点されている明かりだけでは心許ない室内で、彼の動きは実に軽やかに、まるで部屋の間取りを全て把握しているかのようだ。
血だまりの前で動きを止めるとその場にしゃがみ込み、煙草の灰を落とさないように配慮したのか、咥えていたそれを指で挟むと今度は思いきり煙を吐き出した。
遺体は先刻鑑識が運び出したお陰で、部屋の中には惨劇の跡しか残っていない。だが、血だまりの多さからその様子が余程酷かったのが計り知れる。
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